黄色ブドウ球菌の乳房内感染

Staphylococcus aureus(以下SA)は牛床などの環境に多く存在する大腸菌や連鎖球菌と違い、『伝染性乳房炎』とされています。
臨床症状が極めて軽度であることも多く、発見されぬまま、乳腺細胞で長期間持続感染し、搾乳作業で感染乳房から他へと伝染していきます。

SAの予防法

SAは荒れた皮膚や傷に多数生存し、搾乳作業(ライナースリップなど)により乳房内に侵入感染すると考えられます。乳頭皮膚を健康に保つことが予防の第一歩です。

論文1

SAの遺伝子調査の報告があり、乳頭皮膚に付着しているSAと感染乳汁からのSAは遺伝子型が同じで、乳頭皮膚のSAが乳房炎の感染源であることを述べています。

乳頭皮膚のSAが乳頭口から乳房内に侵入し感染の原因菌となる

論文2

乳頭皮膚に付着しているSAは感染乳汁からのSAとは遺伝子型が異なるため、乳頭皮膚のSAが乳房内に侵入しても感染しないとする正反対の報告もあります。
この報告からは、荒れた乳頭皮膚にSAが多数付着していても、それが原因でSA乳房炎になる可能性は低いと言えます。現在推奨されている、乳頭皮膚のケアーを考えた清拭用の殺菌剤やDipping剤の選択などは予防価値の低いものとなります。

乳頭皮膚のSAは乳房内に侵入しても感染しない?

これらの報告の違い(乳頭皮膚のSAが乳房内感染の原因菌なのか否か)に決着をつけるべく、2008年~2010年に佐呂間町の18農場でSA保菌牛20頭の乳汁、感染乳頭の側面の皮膚と乳頭口周囲からSAを採材し、乳汁から20、乳頭皮膚(乳頭側面、乳頭口周囲)から36の合計56のSAを分離しました。
56のSAの遺伝子型は東京薬科大学に分析を依頼し、分析結果から、遺伝子型は2種類に分類され、乳汁と乳頭皮膚のSAの遺伝子型がほとんど一致していました。

まとめ

SAの乳房炎感染のコントロールのためには・・・

  1. 乳房皮膚に付着するSAを減らすこと。つまり、乳頭皮膚が荒れないように健康に維持することの重要性が確認されています。
  2. 今回分離できたSAの遺伝子型は2種類にしか分類できなかったことは、農場間で限られた2種類のSAが長期間にわたり感染。乳腺細胞への定着を繰り返していたことを裏づけるものです。

今回のSA調査で、佐呂間町の酪農家の皆様にご協力いただき大変ありがとうございました。紙面をお借りしてお礼申し上げます。

北見家畜診療所 損防課 山本展司

最終更新日:2019年2月5日