1.繁殖とは?
繁殖とは、子孫を残すことであり、すべての生命体(細菌、ウイルス、草花、牛、人)に共通することです。生命体の営みは①に食欲、②に睡眠、③そして性欲です。①②③それぞれは、決して入れ変わることはないです。
生命体が子孫を残すためには、まず自分自身の体を維持しなければいけません。たとえば牛では、病気(蹄病、乳房炎、不良サイレージによる消化器疾患)になっていると、子孫を残すどころではなく、まず自分自身の身を案じるでしょう。
①食欲を満たす良好な飼料、②睡眠・休息のための牛床(牛舎環境)が満たされて初めて③性欲即ち発情なのです。
2.発情発見プログラ
せっかく飼料設計と牛舎環境が改善されて、いよいよ発情となっても、畜主がその発情(行動)を見逃せばすべて水の泡です。
発情を発見し、授精させ、受胎させる。その後、分娩とともに乳を出します。
つまり、酪農の始まりは、発情を発見するところからはじまると言っても過言ではありません。そこで今回、発情発見プログラムを提案します。
Ⅰ.発情発見の観察者を決め、そのためだけの時間をつくる。
Ⅱ.一日2~3回観察する。
Ⅲ.1回の観察に最低15分かける。
Ⅳ.観察は、朝一番と夜最後に行う。また、牛を牛舎から出し入れするときなど。牛群の1/4の牛は発情時間が8時間と短く、深夜から早朝にかけて発情を示すことが多い。
Ⅴ.発情発見と他の作業を一緒に行ってはいけない。(牛床の手入れなど)
Ⅵ.授精している、していないにかかわらず、すべての発情を記録する。
Ⅶ.出欠も発情があったことの指標となる。
Ⅷ.牛同士がお互いに自由に乗り合うことができるよい場所を用意する。
Ⅸ.発情発見補助器具を用いることも方法である。
Ⅹ.ホルモン剤による発情同期化を行い、集中的に発情観察を行う。
発情徴候観察の仕方と要点
①牛舎に入ると、起立している牛。放牧すると群から離れたり、落ち着きがない。
②盛んに鳴いている牛。
③マウンティングしている。(他の牛に乗っかる)
④スタンディングしている。(他の牛に乗っかられても動かない)
⑤尾や陰毛の付着物や外陰部からの粘液。(なかなか切れない、長い粘液など)
⑥外陰部の腫張・発赤。(薄いピンク色で、外陰部のしわがない)
⑦外陰部の粘膜の充血。(外陰部を開くと赤い)
⑧しっぽに抵抗性がない。(しっぽが軽い)
⑨十字部に負重をかけても抵抗しない。
⑩尾根部の体毛がない、あるいは体毛が寝ている。
⑪乳量の低下