経口電解質製剤(ケイコウデンカイシツセイザイ)、読みにくいので以下、電解質とします。
スポーツドリンクの粉のようなもので、水分と塩分を体に補充する目的で使います。子牛の下痢のときに使用している農家さんも多いと思います。
成分の比較
それでは、人用スポーツドリンクと牛用電解質の違いは何でしょうか。人用のスポーツドリンクと牛用一種類を塩分、カロリーで比較してみます(表1)。
塩分は主要成分のナトリウムの量を示しています。牛用は人用に比べ塩分量で圧勝です。
下痢では、塩分が水分と一緒に腸から体の外へ大量に出ていってしまいます。牛用電解質は出ていく塩分を効率よく補ってくれそうです。
ではミルクと電解質の中身も比べてみます。ミルクは生乳です。今度も塩分量ではミルクに対して圧勝ですが、カロリーは完敗です。ミルクがいかにエネルギー補給に適しているかわかります。同時に、電解質の塩分量が子牛の飲むミルクに比べ非常に多いことがわかります。
電解質の効果的な使用
以上から電解質を定義すると、『下痢で失われる塩分の補給には有効だが、子牛が普段飲むにはエネルギーが低く塩っぱ過ぎるもの』となるでしょうか。
電解質の効果的な使用時期は、子牛の体内から水分、塩分が出て行く下痢の急性期ということになりそうです。
電解質は下痢の治療に役立ちますが、使用方法を誤ると危険な場合があります。誤使用による事故の多くは、粉を溶く水の量が電解質の粉に対して少ない場合に起こります。濃い電解質は本来の目的とは逆に体の水分を奪います。飲めば飲むほど脱水し、最後には死んでしまう場合もあります。
実際あった事故として、水を目分量で入れていた為不足していた例、1リットルの哺乳瓶に2リットル分の粉を溶いていた例、粉を直接ミルクに入れていた例があります。
電解質は急性期の下痢の治療にはとても有用です。用法用量に沿った使用を心がけ、使用法に迷ったら獣医師に相談しましょう。
ナトリウム含量 (mg) |
カロリー (kcal) |
|
---|---|---|
牛用電解質 | 258 | 12 |
人用スポーツドリンク | 49 | 25 |
生乳 | 40 | 66 |
(表1) | *それぞれ100mlあたり |