搾乳と乳房炎

通常、乳房炎は乳頭口から侵入した原因菌を乳牛が免疫で排除できなかった時に発症します。

搾乳牛で乳頭口からの原因菌の侵入は、<1>搾乳中のライナースリップと、<2>搾乳後乳頭口の閉鎖が不十分なことにより生じます。

ライナースリップ

ライナースリップにより流入した空気は乳房や乳頭側面の汚れや細菌を伴って、真空圧のより高い別の乳頭内に細菌を侵入させます(パルセーションが前後拍動の場合、左後のライナースリップでは右後の乳頭内に細菌が侵入する)。

搾乳中のライナースリップはいくつかの原因で起きますが、乳頭の細い牛や内向きの乳頭の牛では、ライナースリップを起こしやすくなります。

内向きの乳頭

 

特に搾乳後半では乳頭の張りが減少し乳頭とマウスピースに間隙が生じ、ライナースリップが発生します。

ライナーは毎日の洗浄殺菌でダメージを受けマウスピースに歪みが発生するとライナースリップを起こしやすくなります。ライナーの使用期限を守りましょう。乳頭への捻じれが生じないようにライナー装着しましょう。

(ユニット当たりの真空圧が低い場合はミルククロー内が乳汁で満たされてくると、真空供給が減少しライナーが乳頭に吸い付く真空圧が減少します、ライナーは重みで下がり気味になり乳頭とマウスピースの間から空気が流入しやすくなり、ライナースリップが発生します。)

乳頭口の閉鎖不全

前搾りでの乳頭刺激が不十分な時は搾乳前半に真空圧に対して十分な乳量が出ず(特に乳期後半の牛で見られます)、乳頭口が過度の真空に曝されることで損傷を受けます。

 

搾乳前半の過搾乳

 

搾乳後半の過搾乳

搾乳後半に乳量が減少しても搾乳を停止しない場合(自動離脱の設定)や乳頭口が渋い牛では乳頭口が過度の真空に曝されることで損傷を受けます。

過搾乳では乳頭口の閉鎖が不完全になるため、牛床から原因菌(敷料の麦かんに付着しているレンサ球菌や糞便中の大腸菌など)の侵入を許すことになります。

過搾乳による過度の真空圧は、乳房内の組織にも損傷を与え、原因菌は損傷部位で増殖しやすいため、乳房炎の発生リスクが高くなります。

また、乳頭口がゆるすぎる牛は搾乳が速く終了し、乳頭口の損傷はほとんど起こりませんが、乳頭口がゆるいため原因菌が侵入しやすく、逆に乳房炎の発生リスクが高くなります。

乳房炎の防除には乳頭の向きや乳頭口の渋さなどの改良が必要です。

 

最終更新日:2019年7月4日