2008年11月13日
子牛の初乳、冬の栄養・管理・病気予防はどうしよう?
今回は大空支所 浦富 弘獣医師です。
今年はセミの鳴き声が聞こえなかった、ヘビの路上日光浴?をあまり見かけなかった、そんな夏でした。さあ、寒い季節がまたやってきますね。ヒトも寒いけど子牛も寒い!がんばって乗り切りましょう。ご存じのことも多いかと思いますが、子牛について少しお話しします。
1.初乳
- 生まれた子牛は初乳からでしか母牛からの免疫(抗病力 移行抗体)を受け取れません。
- 出世後、ある程度元気になったら比重の高い初乳を飲ませましょう。1.060以上あると理想的です。
- 乳房炎に感染していない初乳を給与してください。
- 比重計で初乳を測定することをおすすめします。比重の高い初乳=高い免疫力
- 良質初乳はパックなどに詰めて冷凍保存し、初産牛(低比重牛)病牛(乳房炎)の場合に給与しましょう。
- 搾った初乳は不潔な容器、細菌が増える環境での保存はやめ冷蔵・冷凍しましょう。
- 保存容器、投与する哺乳ビン、チューブ等は毎回洗浄しミルクの固形分を残さないように(洗剤 熱湯)。
- 初乳は免疫のみならず高栄養です。確実に飲めている(飲ませている)ことを確認してください。
- 特に肉用牛(和牛)では子牛が母牛から吸乳している事しか知り得ません。初乳の質、飲めている量などが不明なら凍結初乳や人工初乳をあらかじめ用意して対応しましょう。(初乳摂取不全対策)
- 最近では牛乳(初乳)を加温殺菌(60℃30分)し、冷却する装置(パスチャライザー)も数社から販売されていますが、筆者はまだ実物にお目にかかっていません。
2.栄養
- 45kgの子牛が一日約500gの増体を期待するとき
維持に必要なエネルギーは約1700kcal
成長に必要なエネルギーは約1300kcal
一日に必要なエネルギーは約3000kcal - 寒い環境では体温維持のために非常に多くの維持エネルギーが必要です。夏と同じ給与量ではエネルギーが足りません。
- 出生子牛では15-20℃、生後1ヶ月の子牛では5-15℃の環境温度を維持しましょう。
- 厳冬期-10℃の環境下では体温を保つために必要な維持エネルギーは10℃の季節と比べて約600kcal余計に必要です。寒冷期には牛乳・代用乳(スターター)を調節(増量)してください。ちなみに牛乳1リットルのエネルギーは600kcalです。
3.管理
- 生まれた子牛は体温低下を防ぐために、乾かし保温しましょう。
- 風が吹き込む環境は子牛の体温を低下させ、より多くのエネルギーを必要とするので注意してください。
- 牛床の湿り気を無くし敷き料を十分に入れましょう。
- アンモニアの多い環境をさけて管理しましょう。
4.病気予防
- いままで書いてきたことが病気予防にもなります。
- 口から細菌・寄生虫が入って感染する下痢が多いので清潔に飼養しましょう。
- ハッチは洗浄後石灰塗布も良法です。また子牛同士が舐め合う環境を作らないようにしましょう。
- 母牛にワクチンを投与している場合は確実に初乳を飲ませましょう(吸乳させましょう)。
最終更新日:2019年2月5日