乾乳期中の変化と管理について

乾乳期間中は乳腺や身体的な変化の時期であり、一般的に、乾乳期間は乳腺細胞(乳腺上皮細胞)の生理的な変化から、以下の3つの段階に分けることができます。

第1段階:退行期

第2段階:安定した退行期

第3段階:初乳生成期

第1段階は搾乳の中止から約3週間で、牛乳を分泌する乳腺細胞が消失していきます。

第2段階は乳腺細胞の消失が完全に終了し、乳房は小さく萎縮し、乳房内は抗菌性物質(ラクトフェリン、抗菌性タンパク、白血球など)が高濃度になった、安定した期間と言えます。日数は第1と第3の間の期間となり乾乳日数により異なってきます。

第3段階は乳腺細胞が再生し始め、第1段階とは反対の経過をたどり、初乳生成が行われ、約2~3週間が必要になります。

これらの段階を経て、乳腺細胞は一度消失し、新しい乳腺細胞に更新されます。つまり、すでに乳房炎や真空刺激などで損傷した細胞も治癒することになります。

乾乳期の最終的な目標は、IgG1濃度の高い、良質な初乳を生産すること、泌乳期に低体細胞数の牛乳を最大限に生産することと言えます。

乾乳によって、更新された新しい乳腺細胞は、子牛へ免疫を伝達するためのIgG1濃度の高い、良質な初乳を生産し、分娩後には最大限の泌乳能力を発揮することができます。

そのためには、すでに存在する乳房炎を乾乳期間中に治癒して、乾乳期間中の新たな乳房感染を最小限に抑制しなければなりません。

乾乳期間中の新たな乳房感染

第1段階は搾乳を中止しても翌日には乳房内は乳汁に満たされ、乳房内圧が上昇するため乳頭口は完全に閉じた状態ではなく、乳頭口を塞ぐケラチンプラグも、まだ完成していないため、乳頭口からの新しい感染を起こし易い状態になっています。

第3段階は初乳生成のために再び乳房内圧が増加し、第2段階で乳頭口を塞いでいたケラチンプラグが分解することで、乳頭口か開き、新しい感染を起こし易い状態になります。

第2段階は乳房内が抗菌性物質で満たされ、通常、乳頭口は外部からの細菌の侵入を防ぐケラチンプラグで閉じられて、感染に対して強いと言われていました。

ところが、2004年、アメリカとカナダの5牛群、1178乳頭の調査では、5牛群の平均で乾乳の3週間後で31.8%、4週間後(第2段階:安定した退行期)でも28.5%の乳頭口がケラチンプラグで閉じられていなかったこと、また、乾乳時の乳量が多い農場ほど、乳頭口が閉じていない傾向にありました。この結果から考察できることは、(日本ではケラチンプラグの代わりになる、乳頭内シーラーが許可されていないので)、乾乳期の牛舎環境を衛生的に保つことの重要性が再確認できます。やはり、環境性細菌によって起こる新たな乳房感染の予防に、重点を置かなければなりません。

乾乳軟膏の使用

上記したように、すでに存在する乳房炎は、乾乳にすることで、ある程度の治癒率は認められますが、より高い治癒率を達成するため、また、乾乳期間中の新たな乳房感染の予防のためにも、やはり、乾乳軟膏を使用することが必須と言えます。

農場における乾乳期の管理不足は、その後の泌乳期での乳房炎、代謝病、繁殖障害など経済的な損失を招くことは酪農家さんが身をもって感じていることと思います。乾乳期は泌乳期と同様に適切な管理が要求される重要な期間なのです。

 

最終更新日:2019年7月16日