乳頭の健康管理について
「最近、乳房炎が多くて」と言う声は、診療中よく耳にする言葉です。では、いったいどのような牛が乳房炎になっているのでしょう?何度も何度も乳房炎を繰り返す牛が多いのか、新たに次々と乳房炎にかかる牛が多いのか、初産牛に多いのか…。実際に搾乳の現場に赴くのなら話は別ですが、限られた診療時間中に話を聞いただけでは、事態を把握することはなかなか困難です。そんな時にふと思うのは、「どのような牛?」と言うことです。
乳房炎にかかった牛の乳頭はどのような状態になっているでしょう?搾乳は乳頭に集中した作業です。乳頭口と乳管は、乳房内につながる最も重要な微生物に対するバリアを形成しています。搾乳中に乳頭口に力がかかると皮膚の肥厚が進みます。皮膚の肥厚した輪が硬くなり割れてきたら、乳房炎にかかりやすくなります。治療と淘汰だけで乳房炎を減らすことは困難なばかりでなく、経済的な損失も大きくなります。乳房炎を減らすためには、まず、新たな乳房炎の発生を減らすことが重要になります。乳房炎の感染にもっとも影響度が高いのは、牛体の清潔度であることはいうまでもありませんが、あわせて搾乳時に乳頭の状態を評価することで、牛は「先」の問題のヒントを私たちに与えてくれるかもしれません。
以下に、乳頭スコアを紹介します。乳房炎にかかった牛の乳頭はどんな乳頭でしたか?
乳頭スコア
乳頭口の状態に基づいて、乳頭をスコア化する試み。1から4のランクが以下のように決められている。
出典:Animal Sciences Group at Wageningen University, Lelystad.
乳頭スコア3・4の牛が多いときには以下のことが考えられます。
1.ユニットの装着に問題はないか?
十分な乳頭刺激を与えて1~1分半後にユニットを装着していますか(前号の損防だよりを参照のこと)。
2.搾乳時の陰圧(乳頭にかかる陰圧)は適正ですか?
(高くても、低くてもダメ!)ミルカーの真空度、エアー漏れ、調圧性能の確認。
3.搾乳中の乳頭マッサージに問題はないか?
拍動装置、ユニットの状態(ロングミルクチューブの長さ、ライナーの劣化等)の確認。
4.過搾乳はないか?
マシンストリッピング(搾りきってはいませんか?)、自動離脱装置の調整等。