2011年1月13日
近年、発生が増加し、感染してもほとんどの牛は無症状で、治療方法が無い恐ろしい病気、牛白血病についてお話したいと思います。
牛白血病は、リンパ系の細胞を腫瘍化させる病気です。
本病は地方病型と散発型に大別されますが、その殆どは地方病型の白血病であり、牛白血病ウイルス(BLV)が原因で起こります。
病 型 | 原 因 | 発症年齢 | 主な臨床症状 |
---|---|---|---|
地方病型 |
成牛型 牛白血病ウイルス |
2歳以上 |
体表リンパ節の腫大 |
骨盤腔に腫瘤 |
|||
散発型 |
子牛型 不明 |
1歳以下 |
リンパ節が左右対称性に腫大 |
胸腺型 不明 |
4~24ヶ月齢 |
頚部の腫脹 |
|
皮膚型 不明 |
1~5歳齢 |
全身の皮膚に蕁麻疹の皮膚腫瘤 |
感染様式 | 感染する率 | 詳 細 |
---|---|---|
子宮内感染 | 4~8% |
感染牛の胎盤、産道で子牛が感染 |
乳汁感染 | 6~16% |
感染牛の乳汁を新生子牛が摂取することで感染 |
人為的感染 | 高 率 |
注射針、直腸検査用手袋、ミルカーを介して感染 |
出欠を伴う除角・去勢・耳標装着によって感染 |
||
吸血昆虫媒介 | 状況による |
アブ・サシバエなどによる機械的感染 |
感染牛の60~70%は無症状ですが、周囲の牛への感染源となります。また、感染牛の約30%はリンパ球数の増加が認められますが、臨床的には異常を呈しません。
感染牛の一部(0.2~0.5%)は1~8年後に発症し、削痩、元気消失、食欲不振、眼球突出(写真1)、乳量減少等となる他、体表リンパ節の腫大(写真2)が起こります。また発症牛は数週間から数ヶ月で致死的経過をとります。
- 血液が付着する可能性のある注射器(針)、直腸検査用ビニール手袋は1頭毎に交換する。
- 除角・去勢器具、耳標装着器、鼻環装着器は、1頭毎に消毒して使用する。
- 吸血昆虫(アブ・サシバエなど)による媒介を防止するため、忌避剤を含んだイヤータックを装着したり、薬浴を行う。
- 定期的な牛舎の洗浄・消毒を行う。(特に分娩房は念入りに)
- 初乳は抗体陰性牛のものを与える。または、加温(56℃30分)・凍結融解したものを与える。
- 全頭検査で感染牛を把握し、抗体陽性牛は隔離あるいは淘汰する(抗体検査は6ヶ月齢以上が対象)。
ヒト、ネズミ、鶏等でも白血病が知られていますが、各動物の白血病ウイルスは、特異性が強いため、白血病ウイルスがヒトに感染することはありません。
最終更新日:2019年2月5日