「黄体出来ない」は卵巣だけの疾患か

雄武事業所 中西 尚志 診療課長補佐

牛(特に経産牛)の繁殖障害は栄養障害の一部であることは広く承知の通りです。分娩後、発情が来ない牛の乳検成績を見れば何だかの警告マークが附いていることが一般的です。
しかしその一方、乳検成績では何の問題もないのに「発情が来ない」「何回つけてもとまらない」という問題牛がいるのも現実問題です。
そこで後者のような牛の子宮の中がどうなっているかを考えてみたいと思います。

図1で示すように発情期には、外陰部では弛み、子宮は収縮し、卵巣には卵胞が存在し、子宮外孔は開き頚管粘液が流出します。
農家からAI依頼があれば、授精師はそれらを総合的に考慮したうえ授精します。
一方、黄体期であれば外陰部は縮み、子宮は収縮せず、卵巣には黄体が存在し、子宮外孔は閉じて頚管粘液の流出は見られません(発情後、7~8日にこのような状態なら受精卵移植が可能です)。
ところが、問題牛の場合このようにすっきりとした発情期、黄体期の区別が困難なことがよくあります。
この異常を最も顕著に表すのが子宮外孔所見です。
子宮外孔は、まさしく子宮の表玄関です。
ここに異常が見られれば、子宮内環境も異常であることが多々見られます。

授精して7~10日目なのに黄体不良の場合や、何回ホルモン注射してもだめな場合この子宮外孔がゆるい、赤い、ジクジクしてるの三大所見を示すことが一般的です。

このような状態のとき、子宮洗浄をし、その還流液を観察すれば肉眼的には細かいモロモロ、顕微鏡で見れば写真1の様な異常物体が密度の差異はあるものの多くの場合に見られます。
ちなみに正常に発情があって正常な受精卵が採れる場合は写真2の様にこのような異常物体はほとんど見られません。
ですから子宮洗浄するということは、このような異常物体の「発見、確認」と「除去」の両者を兼ねることになります。

正確な検査のレベルでは子宮内膜の一部を切り取って細胞を診る生検や超音波画像診断には及びませんが現場で手軽にかつ安価に出来て診断と治療を兼ねる子宮洗浄は繁殖障害対策の一つとして選択肢の中に入れても良いと思います。

キーワード

子宮外孔は子宮の表玄関

(玄関が汚くても応接間に通されれば清潔、豪華さに驚かされることもその逆もあることは事実です。)

最終更新日:2019年2月5日