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技術情報

2009/11/13

前搾りとオキシトシン

前絞りとオキシトシン

 

搾乳は酪農をする上で毎日欠かすことのできない作業です。しかし毎日の搾乳により乳頭は少なからずダメージを受けています。乳頭が傷むと乳房炎を発症するリスクが高くなります。この乳頭へのダメージを少しでも減らすために、毎回きちんと前搾りを行いましょう。

前搾りは乳頭を拭く前に各乳頭5回以上ずつ、根元からしっかりと搾ります。そして前搾りの1分~1分半後にミルカーを装着し5分以内に搾乳を終了できれば、乳頭へのダメージは最小限に抑えられ、最大乳量を搾ることができるでしょう。しかしこの基本的な搾乳の流れは分っていても、あまり気にせずにきちんと行っていない農家さんも少なくはないでしょう。

そこで、今回は前搾りやミルカー装着のタイミングによって、搾乳にどのような影響が出ているのかについて話したいと思います。

 
     

頭刺激による応は? 1分後にピークに達する

 

乳頭を刺激すると牛の中ではどんな反応が起きているのでしょうか?

1.十分な刺激を乳頭に与えます。

2.脳からオキシトシンというホルモンが血液中に放出されます。

3.血中のオキシトシン濃度は乳頭刺激から約1分後にピークに達します。

4.オキシトシンは乳腺細胞に作用し乳腺細胞内の乳を排出させます。そのため乳房内圧が高まり、乳頭から乳が排出されます。

     
 

乳房内には乳腺葉といういくつかの部屋があります。乳腺葉の中には乳腺細胞があり、乳はここで作られています。作られた乳は乳腺葉から出て、管を通って乳腺槽や乳頭槽に溜まっていきます。そこが乳で満たされると、乳腺葉の中も乳で満たされていきます。

そして乳房内の圧力が次第に高まっていきます。そのため、搾乳後にしぼんでいた乳房は次の搾乳時にはパンパンに張った状態になるのです。ちなみに搾乳直前の乳房では、乳腺葉の中に約6割の乳が溜まっています。

搾乳時、乳腺葉内に溜まっている乳はオキシトシンの作用を受けることにより乳腺葉から押し出されます。乳腺葉の中の乳が押し出されることにより乳房内圧はさらに高まります。そして乳房内圧が十分に高まっている状態でミルカーをかけると、勢い良く乳が排出されるのです。

     
 

搾乳中の乳量とオキシトシン濃度の関係を下のグラフに示しました。赤の線は生乳がクローに入っていく流量(1分間に何㎏の乳が排出されているか)を表し、青の点線は血中オキシトシン濃度を表しています。グラフはイメージですが、実際に搾乳時の流量を測ってみるとだいたい同じようなグラフになります。

きちんとした前搾りを行うことやミルカー装着のタイミングを守ることには、このように大切な理由があります。(他の搾乳手技も同様です。)

一般的に推奨されている搾乳方法を守り正しい搾乳を心がけることは、乳頭へのダメージ軽減(=乳房炎になるリスクの軽減)や乳質の改善だけでなく、乳量の増加や作業時間の短縮にもつながるでしょう。

     
     
 
 

乳頭刺激から1分~1分半後にミルカーを装着すると、この時点で血中のオキシトシン濃度がピークに達しています。そのため乳房内圧は十分に高まっており、ミルカーを装着するとすぐに十分な量の乳が排出されます。

クローへの流量はすぐに最大となり、5分以内に搾乳が終了します。乳頭へのダメージは最小限に抑えられます。

     
     
     
 
 

この場合、搾乳開始の時点ではオキシトシンの作用がありません。搾乳開始後すぐに乳は出ますが、乳頭・乳腺槽に貯留している乳が排出されるだけなので、すぐに流量は低下します。

オキシトシンはミルカーの装着による乳頭刺激によって放出されます。そのため搾乳開始1分後から流量は増加します。しかし、オキシトシンが作用し乳房内圧が高まるまでの1分間程度は過搾乳状態となってしまいます。さらにその分搾乳時間も長くなり、乳頭へのダメージが増えます

ミルカー装着のタイミングが早すぎる場合もこれと似たような状態になってしまいます。

     
 
 

乳頭刺激からミルカー装着までの間隔が開きすぎると、オキシトシンの作用はほとんど無くなってしまいます。さらにオキシトシンは一度放出されるとしばらくの間は放出されないので、ミルカー装着によって乳頭が刺激されてもオキシトシンはほとんど出ません。

そのため乳房内圧は十分に高まらず、流量は少なく、搾乳時間は長くなります。

長時間のミルカー装着により乳頭は大きなダメージを受けてしまいます。

     

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